大和の清九郎

「妙好人」(信仰に篤い人)と讃えられる大和の清九郎についてお話します。

大和(今の奈良県)に清九郎という人がいました。貧しく、読み書きもできず、「せいくろう」と書かれた傘の文字も読めなかったといわれていますが、大変な親孝行者な人物でした。

その清九郎が、樵(きこり)の仕事中、彼の近くに鶯が飛んできて美しい声で「ほう、ほうけきょ」と鳴きました。最初は気にも留めていたかったのですが、そのような事が2年ほど続きました。

そんなあるとき、近所のお寺で宝物を公開するというので見に行くと、その中に蓮如上人の愛用していた鶯の籠がありました。そこで、

「この籠は、蓮如上人の病中のお見舞いに献上した鶯用の籠ですが、蓮如上人は、鶯の声をお聞き『鳥さえも、法を聞けよと教えてくれている』と大変お喜びになった」

と説明を受け、自分に付きまとう鶯も、「法をきけよ」と催促していたと気づきました。
自分に付きまとう鶯の「ほうほうけきょ」の鳴き声を、「法を聞けよ」と催促する声と受け止めたわけですね。それ以来、熱心な信仰生活が始まったと言われています。

私一人のために、遥か昔から阿弥陀如来の慈悲の光は降り注いでいます。
清九郎の逸話は、私たちが、阿弥陀如来の光に照らされていることに気づいていくことの大切さを教えてくれているのではないでしょうか。