お焼香はなぜするのでしょうか。

それは、すべての人を すくう という仏様のお慈悲を表し、それに触れる意味合いがあるからです。

お焼香の意味

まれに、「どうしてお焼香をするのですか」と尋ねられることがあります。確かに、昔からの習慣でやっているうちに、何故するのか、というのが分からなくなってしまうことはあると思います。では、お焼香は何のためにするのでしょうか。

実はこれには、諸説あります。

一つには、お香をたけば、その香りが部屋中に充満していきますが、これが全ての人を すくう という仏様のお慈悲を表し、それに触れるという説があります。

また、お香の香りが体臭などを除き、心と体を落ち着かせ、すがすがしい気持ちで仏さまに接するためという説もあるようです。

その他には、お香は故人の食べ物で、お供えにはお香が一番いいという説もあり、これは、インドの『倶舎論(くしゃ ろん)』が元になった話のようです。

ちなみに、宗派によっては焼香する回数が2回のところもあれば、3回のところもありますが、浄土真宗本願寺派(西本願寺)では、基本的には1回焼香です。

この「香り」に心を向けると、親鸞聖人のある和讃が思い出されます。

『浄土和讃』
染香人(ぜんこうにん)のその身には 香気(こうけ)あるがごとくなり
これをすなはちなづけてぞ 香光荘厳(こうこう しょうごん)とまうすなる

(お念仏を申す人は、よい香りが身に染みついた染香人にもたとえられ、まるで芳しい香りを放っているようである。これを名付けて、香光荘厳と言うのである。)

香りというのは、阿弥陀様のお徳を表します。

もともと阿弥陀様を敬う気持ちもなく、お念仏をすることも無かった人が、いつしか阿弥陀様のお徳が自然と染み渡り、お念仏をするようになっていく様子を「染香(ぜんこう)」と表現されたようです。

そして「香気(こうけ)」は阿弥陀様の智慧の香りが私たちに移った様を表しており、阿弥陀様のお徳が私たちに はたらいてくださっていることを表します。

このように、阿弥陀様よりたまわった智慧の香りと光によって、念仏者の人生が美しく飾られることを「香光荘厳(こうこう しょうごん)」と表現されたのです。

(※ 「染香人」は、『首楞厳経』に、念仏三昧に生きる人のことを「染香人」と説かれている言葉によります。)

 
香を聞く
 
ところで、お香の香り楽しむ、「香道」の世界では、お香の香りを「嗅ぐ」ことを「聞く」と表現します。これは聞いた話ですが、「嗅ぐ」は積極的に匂いを「かぐ」で、「聞く」は匂いが漂ってくるという意味合いのようです。

浄土真宗でも「きく」という表現には「聴く」と「聞く」の2種類を使い分けます。「聴く」は積極的に話を「きく」で、「聞く」はきこえてくるという意味合いです。

そして浄土真宗は、聞名(もんみょう)の宗教といわれるように「聞く」を大切にします。阿弥陀様に、積極的にこちらからお願いして、お祈りするというものではなく、常に私たちに向けられている、はたらき に気が付いて、「ああ、いつも向けられていたのですね」とただお任せするだけでいいのです。

このように、「香り」一つとってみても、そこには阿弥陀様の おはたらき の様子が表現されているのですね。